『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一(4冊目)

読書日誌

一万円札になる予定の渋沢栄一さんが講演で話している内容をまとめた書籍。
日本で初めて会社組織や銀行を設立した人物として有名であるが、他にも、東京海上火災、日本郵船、JR、サッポロピールなど、名だたる大手企業の設立に関わっている。なぜこの人が教科書に載っていないの?(多分載っているが自分が気づいていないだけの気もする…)というくらい現在の日本経済に影響を与えた人である。

ビジネス現場に論語の考え方を

本を読んでわかったことは、渋沢氏の考え方、生き方の根本には「論語」の教えがあるということ。小学生でも「道徳」という言葉は学ぶ。社会的に良いことをすると言う漠然としたイメージだったが、渋沢氏の言葉を聞いてなるほどとすっと腹落ちした。道徳について、渋沢氏は、「仁」―物事を健やかに育む、「義」―みんなのためを考える、「孝」―親に尽くす、「弟」―目上に尽くす、「忠」―良心的である、「信」―信頼を得ることが王道であると述べている。そして、渋沢氏は、この論語をビジネスの現場に活用することで、日本経済の基礎を気づいていった。

道徳と言葉で言うことは簡単だが、これを素直に実行することが難しい。いや、実践できている人は現代においてほとんどいないのではないだろうか(渋沢氏はそのことについて嘆いていた)。渋沢氏はまさにこの道徳を徹底して実践した人だと言える。常に自分の利益や欲を押し殺し、世のため人のために正しいと思ったことを実行する。並の人であれば、欲に溺れてしまうこともあるだろう。

正しい行いは必ず報われる

本書で印象に残った文章がある。『人生の道筋はさまざまで、時には善人が悪人に負けてしまったようにも見えることがある。しかし、長い目で見れば、善悪の差ははっきりと結果になってあらわれてくるものだ。だから、成功や失敗のよし悪しを議論するよりも、まず誠実に努力することだ。そうすれば、公平無私なお天道様は、必ずその人に幸福を授け、運命を開いていくよう仕向けてくれるのである。正しい行為の道筋は、天にある日や月のように、いつでも輝いていて少しも陰ることがない。だから、正しい行為の道筋に沿って物事を行う者は必ず栄えるし、それに逆らって物事を行うものは必ず滅んでしまうと思う。一時の成功や失敗は、長い人生、生涯における泡のようなものなのだ。成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋に沿って行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる。』少し長いが、まっすく自分に突き刺さった言葉であった。日々の仕事の中でもよくあるが、やましいこと、隠したい失敗を黙っていても、必ずバレる笑。背筋を正し、誠実に過ごすことで人からも信頼を置いてもらえる。自分に嘘をつかないことが大切なのだと思った。

もし、この感想文を読み返す機会があるなら、『徳重垢薄』という経文中の一句をぜひ覚えて心に留めて生活してほしい。

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