本作は「オズの魔法使い」の前日譚にあたる作品。オズの魔法使いはアメリカでは日本で言う桃太郎レベルの有名な作品らしい。オズの魔法使いに登場するキャラクターもでてきており、話がリンクしているような描写がいくつもあった。
今回は東京の浜松町にある四季劇場で観劇した。劇団四季の会員(四季の会)限定の事前予約の段階で公演チケットが完売したらしく、その人気の高さが伺える。これまでも劇団四季の作品はいろいろと観た(主に妻が手配)が、初めて劇団四季の作品を見た時のように、「ミュージカルすげえ」と改めて感じさせられた作品だった。豪華絢爛かつ煌びやかな舞台装飾や衣装は、幻想的なオズの世界を見事に再現しており、公演が始まると一気に物語の世界に引き込まれた。公演時間が3時間弱と長い部類に入るかもしれないが、キャラクター一人一人が魅力的で、劇中歌はキャッチーなものが多く、中だるみすることなくあっという間だった。良い作品は何回でも観たくなる。次は大阪でも公演があるらしいので、妻にはなんとかしてチケットをゲットしてもらいたい(他力本願)。
友情の物語
本作の主人公は、肌が緑色の魔女エルファバ。見た目ゆえ父親からは疎まれ、周囲からも奇異の目で見られる存在だった。国内で有名なシズ大学へ入学し、グリンダと出会う。グリンダはその華やかさと底抜けの明るさから友人が多く、人気を集める存在だった。学長の勘違いから、グリンダとエルファバは同じ部屋で生活をすることになり、寮での生活を通じてお互いを知ることで、徐々に友情が深まっていく。
二人の友情が深まったと感じた印象的なシーンが、寮の部屋でグリンダがエルファバの三つ編みをほどき、髪をすき、女性らしい仕草を教えている場面だ。グリンダの教えを見よう見まねでぎこちなく真似するグリンダの姿は愛らしく、観衆の笑いを誘っていた。グリンダがエルファバの三つ編みを解くにつれ、二人を隔てていた壁が取り払われ、グッと距離が近まったような印象を受けた。
差別や偏見といった暗いテーマ性も持つ本作であるが、終始明るい気持ちで観ていられたのは、グリンダの存在が大きかったように思う。アニメやこうした作品には、主人公とは対照的な存在として、グリンダのように容姿端麗でまわりの人気を集めるキャラクターが登場する。大抵、性格が悪く、常に両脇を固めている子分を使って主人公にいたずらを働く。しかし、グリンダはこうしたキャラクターとは完全に一線を画していた。嫌味な言葉を発することはあるが、心の奥底ではエルファバの悩みや葛藤を理解し、寄り添っていた。嫌味のない健気な性格で、エルファバの唯一の理解者であった。どことなく暗いイメージがする本作を、曇り空から差し込む陽光のように、明るく照らしている存在であった。
ストーリーはさておき
ストーリー性が良いのは言うまでもないが、音楽や舞台装飾、衣装がやはり一番印象に残った。Apple Musicには英語版しかないが、それでも毎日ヘビロテである。日本では来年の夏に大阪公演が決定しているし、全米では2024年11月に映画も公開されるそうなので、ウィキッド熱は当分冷めそうにない。
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