『人生の勝算』前田裕二(3冊目)

読書日誌

読む前と後で印象はガラッと…

スッキリのコメンテーターやってるなーというイメージしかなかった前田氏の著書。どんな事業をやっている人なのかイマイチよくわかっておらず、正直、チャラチャラした事業家だなと言う印象しかなかった。本書は、前田氏の生い立ちから、ライブ配信コンテンツである「showroom」の誕生までのストーリーについて書かれている。読んだ後で、前田氏に対する印象はガラッと変わった。やはり人を見た目で判断するのは良くないと、毎回こういった自伝書を読むと感じる・・・。

「稼ぐ」才能

 前半部分は前田氏の生い立ちについて。幼くして母親を亡くし、親戚に預けられた。周囲に頼らなくてもお金を稼いで自立すると言う強い意志から、小学生から路上でストリートライブを行っていたそう。本人は、お金への執着心が人一倍強いと述べているが、執着心に加えて、儲ける手段を考える能力にも長けていたように思った。通行人がなかなか立ち止まってくれない状況を冷静に分析し、そのエリアには年代が高い人が多かったことから、年代に合わせた選曲を行なって少しでも通行人の関心を引く工夫をしたり、客単価を上げるために高級住宅地の白金台に移って路上ライブを行ったりなど。特に印象的だったのは、コアユーザーを作る時の話。自分の知らない曲をリクエストした40代の女性に対し、1週間後に同じ場所に来てくれと伝え、1週間その曲だけを懸命に練習し、1週間後に同じ場所でその女性に対し披露する。曲を聞いた女性は、上手い下手にかかわらず、自分のために1週間を使って練習してくれたというそのプロセスに感動し、1万円を渡してくれたそう。この体験を通して、前田氏は「人は絆にお金を払う」ことに気づいたそう。

社会の変化に伴って人の価値観も変わっている。昔のような貧しい時代は、テレビにしろ、洗濯機にしろ、ものを買うこと自体が精一杯だった。しかし、時代は変わり、物が溢れ、人は自分の好きなものを好きなタイミングで買うことができるようになった。それによって、購買心理にも変化が起きた。前田氏の「絆」と本質は同じだが、人は「体験」にお金を払うようになった。例えば、プロ野球の試合を観に行くという行為も、もちろんプロ野球選手の上手なプレーを見に行くと言う目的の人もいるかもしれないが、多くの人はプロ野球を見に行くという「体験」にお金を払っているのである。(見るだけならばテレビで十分)。スタジアムでユニフォームを買ったり、ビールやつまみを買って仲間内で盛り上がったり、プロ野球を観に行くという一連のストーリーに価値を見出している人は多いと思う。前田氏は幼い時から、その点に気づき、行動に移してお金を稼いでいたのだからさすがだ。そこそこ恵まれた家庭で、お金に困らずほのぼのと暮らしていた自分はつくづく温室育ちだなあと感じた。

熱量は才能に勝る

 後半部分は「showroom」ができるまでの話。前田氏のサラリーマン時代の経験も書かれていた。その部分が特に印象に残った。「モチベーションはどんな仕事術にも勝る」「見極めてから掘れ」(鉱山を掘るときの話)という言葉が深く印象に残っている。自分の進んでいる道は間違っていないという明確な自信を持てるまで、徹底的に自問自答を繰り返し、努力を傾ける領域を見極める。そうして導き出した目標が決まれば、あとはそれに向かって突き進むだけ。そうなればモチベーションも自然と高まってくる。例え能力が低くても、高いモチベーションからくる圧倒的な熱量を持って取り組めば、才能を凌駕できると前田氏が述べているのが印象的だった。前田氏ほどの能力がある人が、モチベーションが一番大事と言っていることがどこか嬉しかった。

人生のコンパスを見つける

 最後に、本書で一番心に残った話。本書のタイトルにもなっている「人生の勝算」につながる言葉。人生において自分が最も大切だと思うもの、つまり人生の「コンパス」を持つことが幸せな人生を送るために何よりも大事とのこと。前田氏の場合は、showroomを世界一のコンテンツにのしあげ、個人の境遇に関係なく努力が認められる社会をつくること、が人生のコンパスであった。そのために、プライベートは二の次でひたすら仕事のことを考えているらしい。(対照的に、家族を一番に考える兄の話があった)。この部分を読んでいて、自分にとっての「コンパス」はなんだろうと考えた。現段階では、結論は出ていないが、「家族との時間」が一番近いのではないかと思う。家族との時間を最大限作るというコンパスを持つことができれば、自然と自分がどのように行動すればよいかが見えてくる。残業ばかりの仕事って本当に必要?家族が幸せになるためにはどんな振る舞いがよい?少しずつでも良いから日々の行動を変えていこうと思えるきっかけを与えてくれた本だった。

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