『苦しかった時の話をしようか』森岡 毅氏(9冊目)

読書日誌

倒産寸前だったUSJをV字回復させた立役者である森岡氏が、就活を控える娘に「キャリアとは何か」「人生とは何か」をテーマに記したノート?を書籍化した本。ビジネス本、自己啓発本の“名著”と呼ばれているだけあって、モチベーションをかなり駆り立てられる本であった。また、自分のキャリアを考える上でかなり役立つノウハウも多く、自分の現状について色々と考えさせられるところもあった。自分が就活をする前にこんな本に出会えたらよかったと心底思った。

やりたいことを探す

 第1章の焦点は、「自分がやりたいことをどうやって見つけるか」について。これまでの自己啓発本にも書かれていたが、まずは自分の「軸」を見つけることが大切とのこと。何が得意(好き)で、何が苦手(嫌い)なのか、自分の中での「基準」が設定できなければ、自分のやりたい仕事を見つけるのは難しい。世の中で成功している人は、必ずと言ってよいほど、「自分の好き」を仕事にしている。堀江氏も言っているが、努力が辛いと感じるならば、それは本当に向いている仕事ではない。努力することを苦痛に感じない、もはや楽しいと思える仕事こそ、その人にとっての天職なのである。そこまで行かないまでも、とりあえず、自分の得意な分野、好きなことを仕事にすることが、幸せな人生を進む第一歩と言える。ただ、唯一やっていはいけない不正解がある。それは、「自分にとって情熱が湧いてこない仕事」や「自分の特徴が裏目にでる仕事」に就いてしまうこと。これだけを避ければ、就活において不幸な結果になることはないらしい。

自分の強みを見つけ、磨く

 2章〜4章のポイントは、自分の強みが生かされる分野をどうやって見つけ、磨いていくかについて。残酷だが、世の中は格差で満ち溢れている。生まれ持った能力はもちろん、貧しい国に生まれるか、豊かな国に生まれるか、それだけでも人生のスタート地点はずいぶんと異なる。日本に限っても、家庭環境によって教育水準がかわってくる。「親ガチャ」なんて言葉もあるくらいだ。ただ、筆者によれば、この「差」こそがユニークさや個性を生む源泉であるという。人と比べて優れている、劣っているという考え方をするのではなく、一人一人が「特別な価値」を持っていると捉えるのだ。自分の能力を悲観する必要はない。得意な分野を伸ばしていけばよいのだ。「己の特徴の理解」と「それを磨く努力」、そして、特徴を生かせる「環境の選択」、この3つに集中すれば自然と道が開けてくる。
自分の強みを見つけ、それを磨く方法については、「ブランド・エクイティー・ピラミッド」とともに詳しく解説されていた。キャリアを積むなかで、世間や会社での評価を高めていくためには、自分を「ブランド化」することが重要だ。ブランド力のある製品は市場価値が高い。製品と同じように、自分自身をブランド化し、マーケティングせよとのこと。自分のなりたい姿を思い描き、それに少しでも近づくために、日々の振る舞いや行動から徹底的に意識する。そうやって続けていると、いつのまにか、理想像に近づいている。また、「問答無用な実績」を作ることも大切と述べられていた。ビジネスの世界はシビアだ。実績がないとブランドはすぐに地に墜ちてしまう。自分のブランド力を高めつつ、結果もしっかり出す、まずは躍起になってこの2つのクリアを目指すことが大事なようだ。

「不安」との向き合い方

第5章は、森岡氏のP&G時代の話が書かれている。タイトルにもなっている「苦しかった時」の話だ。アメリカに赴任され、慣れない環境で、仕事、プライベートともに相当な苦労を経験されていた(ストレスで血尿が出た話は正直引いた笑)。「バッタを倒しにアフリカへ」のウルド前野さんの教訓にもあるが、自分が辛い時は、「世の中には自分よりもっと大変なひとがたくさんいる」と思うことで気持ちを強く持てる。仕事が辛いと感じた際は、森岡さんのこの苦労話を思い出そうと思う…。

 最後に印象的だったのは「不安」との向き合い方についての考えだ。「不安なのは君が挑戦している証拠だ」。慣れないこと、新しいことに挑戦しているからこそ、不安が生まれる。不安とは成長するための「燃料」である。挑戦せず、変化から逃げることばかりを選択していると、成長が止まってしまう。仕事でも当てはまる点が多い。「前がそうだったから…」を理由に、考えることをやめ、工夫せず同じ仕事を繰り返していては、その人はもちろん、会社も成長しないだろう。挑戦しないから、相対的にどんどん弱くなってしまうのだ。今の日本にはそうした人が多いと森岡氏が警鐘を鳴らしていた。人生における最大の失敗は何か、それは、「なにも失敗しない人生」らしい。確かに、成功体験よりも、何かに挑戦して大失敗した経験の方が、意外と笑い話になったり、記憶に残っていたりする。そして次はその失敗をバネにして大きな成長(成功)をするケースがよくある。自分も担当している仕事や将来について不安を感じることが多々あるが、それは決して悪いことではない。自分が成長しようと前に進んでいる証なのだから。

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