『金持ち父さん貧乏父さん』ロバート・キヨサキ(11冊目)  

読書日誌

投資に関する有名なビジネス書。「お金とは何か」「人生とは何か」について考える良いきっかけになった。こうしたビジネス書を読むと毎回思う、「もっと早く読んでおけばよかった」。

金持ちと貧乏を分けるもの

タイトルにあるように、本書では金持ちの父さんと貧乏の父さんが登場する。「金持ち父さん」は友人の父親で、様々なビジネスを手がけている。「貧乏父さん」は著者の実の父親で、教師をしている。貧乏といっても、失業していて給料がもらえず、生活が苦しいという状況ではない。教育を受け、しっかりとした職に就いているにもかかわらず、「貧乏」扱いされている。ではその違いはなにか。それは、「自分のためにお金を働かせている」か「お金のために自分が働いているか」の違いである。所得には、働いて賃金を得る「勤労所得」のほかに、株式や債券などの紙の資産から得られる「ポートフォリオ所得」、そして、不動産所得などによる「不労所得」があると著者は言う。多くの「貧乏」な人は「勤労所得」のみでしか収入を得ることをしない。働いて得た給与は、家賃やローンの返済、生活費に消えていく。毎月毎月このサイクルの繰り返しで、資産がなかなか形成されない。これが「貧乏」な人の実態なのである。そうした状況からいち早く抜け出すために、自分のためにお金を生み出してくれる「資産」を作りなさいというのが本書の主旨であり、そのための具体的な方法が書かれている(不動産投資中心ではあるが…)

投資をする上での心構え

 本書には、投資をする上での原則、心構えの点で心に留めておきたい考え方が多かった。まず、投資対象について熟知すること。「自分がやっていることをちゃんとわかっていれば、リスクを冒したとしてもそれはギャンブルではない」。訳もわからないまま、取引にお金を注ぎ込んで、あとは天に任せているとしたら、それはギャンブルと同じである。大事なのは、自分の持てる専門知識、知恵、その取引(銘柄)を愛する気持ち、それらを総動員してリスクを減らしてくことである。何も知らないのはリスクなのだということを意識することが大切だ。しっかり投資対象について調べ、勉強する。当たり前かもしれないが、こうした努力をきちんと実践できるか否かが取引の明暗を分けるのだろう。

また、投資のタイミングについて、サーファーを例に分かりやすく解説していた。「頭のいい投資家は波が最高のときに乗ろうとしない」。大部分の投資家は、人気のない商品を買うことを恐れている。そうした勇気のない投資家は、群(むれ)でしか動くことが出来ない羊のようなもので、賢い投資家たちが利益を出して次の波へと移っていく頃に欲を出し、勢いの衰えた波に乗ろうとしてしまう。波のピークを逃してしまっているのだ。賢い投資家は、勇気を持って人気がないところを選んで投資する。株価が暴落していても勇気を持ってその波に乗ろうと決意できるかどうかで勝負が決まる。投資とは売る時に利益を得るものではなく、「買う時に利益を得る」ものだと著者は言う。購入時点で勝負は決まっているのだ。だからこそ、自分が購入する銘柄について、念入りに情報収集をするなどしてしっかり準備することが大切になってくるのだ。

転んでもいいから動き出そう

 投資で成功している人の多くは、必ず失敗を経験している。自転車の乗り方を覚えるときを思い出してみよう。転んで膝に擦り傷をつけながら練習を重ねることで、何も考えなくても自転車に乗れるようになる。一発でうまくいくことはまずない。投資も同じだ。損をすることを恐れてはいけない。失敗を重ねることで、勝つためのコツやここぞというタイミングが見えるようになってくるのだ。勝者は負けを恐れないが、敗者は負けを恐れる。失敗は成功に至るプロセスの一部であって、失敗を避ける人は成功から遠ざかってしまうのだ。だから、まずは失敗を恐れず行動あるのみだ。(もちろん、リスクを抑えるための最低限の勉強は必要だが…)。
最後に背中を押してくれる著者の言葉を。「人生はスポーツジムに行くことによく似ている。スポーツジムに通う際、一番辛いのは「行こう」と決心するときだ。しかし、一度足を運んで運動を始めると楽しくなる。そして、運動が終わったあとは無理をしてでも来てよかったといつも思うものだ」。仕事でも、勉強でもそう。始めるまでが一番辛く、高い壁なのだ。それを乗り越えることさえできれば、思っていたよりも大変ではなかったり、意外と楽しかったり、やってみて初めて気づけることがあるのだ。まずは目の前の壁を登る努力をしよう。壁を登ることができれば、いつもと違う景色が見えるかもしれない。

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