『幸福論』中田敦彦(8冊目)

読書日誌

真の“マルチタレント”

芸人、Youtuberとしてマルチに活躍しているオリエンタルラジオのあっちゃんの書籍。武勇伝、パーフェクトヒューマン、Youtuberとして、何度も成功しており、本当に多才な人だなという印象。しかし、そうした成功は決して時の運などではなく、あっちゃんの周到な分析と途方もない努力によって、ある種「必然的に」引き寄せられているのだと感じた。
本書はあっちゃんの自伝書である。幼少期から、学生、芸人時代と現在を振り返って、人生とは何かについて、あっちゃんなりの考えを述べている。ストイックに人生を歩んできた方だからこそ、言葉に深みがあるし、納得性が高い。

“目標”を持つこと

 まず、「目標」についての考え方。目標は達成することが楽しいのではなく、達成するまでの過程が一番楽しいとのこと。夢が叶おうが叶わなかろうが、本当はどっちでもよく、それよりも、プロセスを楽しみ、味わい尽くした者が勝ちらしい。「自分に才能があるのか」など、途中で考えること自体ナンセンスらしい。なるほど、いや待て…、そもそもあっちゃんのなかでは、「目標を立てること」が当たり前になっている。叶うか叶わないか、プロセスを楽しむなどと言う前に、目標を立てることが前提になっている。武勇伝や、芸人からYoutuberへの転身にせよ、行動を起こす前に必ず「こうありたい」という姿が明確に定まっている。目標がないと、プロセスを楽しむことすらできないのだ。目標があるとないとでは、ここまで違うのか…。たしかに、日々ぼーっと何かをやらねばと考えながら生活するより、資格や試験など、来たる目標に向けて日々を過ごしていた方が、毎日が記憶に残るし、充実しているように感じる。仕事にしてもそう。PDCAの「P」がしっかり設定できていないと、実行も分析もできない。日々の生活のあらゆる面で、目標を持つことの大切さについて、改めて考えさせられた。

「まだやれることはある」

 物事に行き詰まりそうになった時、絶望してしまった際、あっちゃんは必ずこう自分に言い聞かせるらしい。あっちゃん曰く、本当に全く打つ手がない状況は存在しないらしい。知らず知らずのうちに、考えることをやめ、思考停止状態に陥っているケースはよくある。どんな愚策でもいいからやれることはやってみる、そうすれば、意外な角度から道が開けることもある。バカバカしい、どうせ無理と決めつけて行動しないより、まずはやってみること、動くことが大事なのだ。自分から見てアクティブだなという人は、おそらく、動く前にいろいろ考えを巡らせているのではなく、とりあえずやってみよう精神の人が多いのではと思う。山の斜面にある石が、一度転がり出すとどんどんスピードが出て転がっていくように、まずは動き始めることが大事なのだ。

「アドリブは入念な準備の上でしか存在しない」

 以前、プレゼンの準備のやり方について、あっちゃんの動画を見た。「最低3人に見てもらう」「30回は練習する」など、事前に相当な練習を行なっていたのが印象的だった。芸人さんが舞台でアドリブを入れて笑いを取れるのは、練習を何回何回も積み重ねた上で、本番の雰囲気やお客さんの状況を見て繰り出せるからである。アドリブもそうだが、試験にせよ、スポーツの試合にせよ、「ゾーン」といった境地に至るのは、入念な準備をおこなってきたからこそのことだろう。準備不足で本番前にバタバタするより、入念な準備を行なった上で、本番ギリギリで「なんとかなるだろ」と言える方がかっこいいにきまっている。

シンプルなことを徹底できる強さ

「目標を立て、考え、動き、プロセスを楽しむ」。そして、最後はなんとかなるだろうという状態が理想なのだ。あっちゃんがやってきたことは、小学生でもわかりそうないたってシンプルなことだ。この本の冒頭は、あっちゃんのおばあさんの話で始まる。おばあちゃんの最後の一言は「リンゴジュースおいしかったわ」だったそうだ。人生は複雑なように見えて、至ってシンプルなのだということを、この時悟ったらしい。あっちゃんがどの分野でも活躍できているのは、シンプルなことをどの人よりも「情熱を持って」「徹底して」やってこれたからだと思う。

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